ともそだち通信5月号

令和6年度の障がい福祉サービスの報酬改定に思う

~ともそだちプラネットのめざす共に生きる、共に育ち合う社会とは~

令和6年3月に厚生労働省から障がい福祉サービスの報酬改定が公示され、障害児支援サービスについても指定基準や支援内容の大幅な見直しや変更が行われました。春休みから新年度にかけての2ヶ月間は、改定の内容を読み解いて、指定された書類の届出や各事業所の契約書類等の改定に追われた毎日でした。ようやく一段落といったところですが、まだ整えなければいけない書類もあります。一方では夏休みの計画や日々の支援も待ったなしの中、このあわただしい改定で「障害のある人たちやご家族や私たち支援者はより幸せになれるのだろうか」と根本のところに不安を感じています。

ともそだちプラネットは2015年に特定非営利活動法人に認可されましたが、この取り組みが始まったのはそれより5年前の2010年です。今から15年前ですが、当時は障がいのある子どもたちは学童保育でも預かってもらえず、放課後の生活のほとんどは家族に託されていていました。学校以外の場での遊びや学びの機会がない状況の中で、当時小学校の支援学級の担任をしていた私と保護者の方たちとで「おでかけクラブ」を始めたのが出発点です。学校や公民館をお借りして会議や準備をして、月に一度ボーリングをしたり、おでかけをしたり、クッキングをしたりしていました。2012年に放課後等デイサービスが法制化され全国に広がっていく動きの中で、社会的責任も負いながらこの取り組みを続けていこうと決断して法人化を進め、放課後等デイサービス「わくわくステーション」を開設しました。そして、おでかけクラブとして行ってきた活動を放課後等デイサービスの支援内容に位置づけて取り組みを続け今日に至っています。

今回の報酬改定で放課後等デイサービスは「障がいのある児童を安心して預けられる場」であり「専門性のある職員が療育・支援することが障がいのある児童の発達成長に有効」ということが明記され、提供されるサービスが細分化されてそこに加算が算定されることになりました。私が気になるのは、「ニーズに応じたきめ細やかなサービスが可能になる、とされるこの改定がどこに向おうとしているのか」という点です。「子どもたちの願いはそこにあるのか?障がいありきで専門性の世界に閉じ込める方向に進みはしないか?」と心配しています。おでかけクラブから出発したともそだちプラネットの放課後等デイサービスは、時間も気にせずたっぷり遊んだり、あえてちょっと怖いと感じることに挑戦する機会をつくったり、宿泊でキャンプをしてみたりと今回の改定におさまらない内容の活動や取り組みを重ねてきました。

年度末に中学3年生の子どもたちと受験勉強をしている時に、「あなたたちが福田先生の(ともそだちの)答え合わせなんだから絶対に合格してね!」と励ますと、すかさず「だったら先生が受験すれば!」と言い返しながらも、ぶ厚い問題集をひろげ勉強している中学生の姿は、小さい頃を知っている私には眩しいものでした。みごとに全員合格してそれぞれの高校生活を送っています。気に入らないと物に当たったり、宿題は一人ではできず目を離すとおもちゃに引き寄せられてフラフラしていたり、友だちとトラブルになって叱られたりしていた彼らが自立していきました。

私たちは、この15年の取り組みの中で、特性のある子どもたちが集団の中で育ち合い、特性を越えて自分らしく輝いて成長していく姿を見続けてきました。私たち職員は彼らとともに、自分の専門性や人間性を磨き、困難さを抱える方たちを支え見守っていくことが使命だと感じています。急速に変化している時代。障がい福祉施策の動向を見すえながら、ともそだちプラネットが描く共生社会を深化させて日々の支援や活動に落とし込み尽力していきたいと思います。今年度もよろしくお願いいたします。(センター長 福田 敬子)

 

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